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誰のためでもなく

「死ぬな」とニートの達人は言う~「ニートの歩き方」

 pha(ファ)という人がいる。

 ニートとしての自らの生活をつづったブログで注目され「ニートの歩き方」という本を出している。

 それを読んだ。

 この人、京都大学出てるそうだ。

 ちなみにこの人は社会的なニートのイメージである「親元にパラサイト」しているのではなく、シェアハウスを運営しつつネットやゲームが好きな人間たちとの共同生活をしている。

 収入はアフィリエイトやせどりなどで年収80万円くらいだが、本を出したりインタビューを受けたりして今はもうちょっとあるのだろうか?

 そんな彼がこの本で主張しているのは、「ニートといってさげすむのではなく、そういう生き方もあると認める社会になったほうが結局自殺とかしなくていいし、そういう風にしようよ」ということ。

 ニートや貧困ブログってのが腐るほどあるけれど、そういう人たちの書くものって人生もう詰んでるとか、自殺しかないってトーンが多い。

 しかしpha氏は、まったく違う。

 自分が社会的にマジョリティである生き方(月~金、40年間満員電車に揺られて会社に出かけ、結婚、子供、住宅ローン漬け)にどうしてもなじめなく、だったらそうじゃない生き方を現状あるもので実現してやろうと試行錯誤したノウハウが本書である。

 寝たいだけ寝て、働かなくて必要最低限の生活が可能になったのはインターネットの恩恵だという。

 ツイッターでいらない家電や自転車くださいといえば誰かがくれるし、飲みに行きたいと思ったら呟けばだれかがいる。会社の同僚や家族などの半径5m以上の人間関係が構築できればニート生活は十分可能だと。

 ニートが生き延びるための最大の武器は「人のネットワーク」であると言い切る。

 しかしpha氏は積極的に人と話したり、長時間他人と同じ空間にいるのは苦痛という。黙ったままそれぞれがネットしたりゲームしたりして、一人になりたければ自室にこもる、そんな空間が、氏の運営するシェアハウスだという。

 そもそも日本って行き過ぎた根性論が根強くて、結果の出ない人間に「頑張りが足りない」とプレッシャーをかけすぎる。そういう圧力から逃れるのにウツや自殺になってしまうのは非常に残念だしおかしい。ならニートになってそういう価値観から逃げ出すほうがよっぽどマシ、という彼の考えはまったくその通りだ。

 震災以降、さまざまなサバイバル術に関する書籍が刊行されている。それはそれでいいことだと思うが、物理的な天変地異よりも深刻である日本の根性論、戦後の右肩上がりの経済で生きてきた現・年金世代のジジイのたわごとである「男は家庭を養って、妻は家を守り」的な時代錯誤の化石思想から身を守る術というのはまだ誰も明確に著していなかったように思う。

 デフレや経営の調整弁としての雇用調整など、ジジイの時にはなかった状況を生き延びるためには、「頑張りが足りない」という強圧がまだ根強い社会と渡り合うだけの知恵が必要である。

 本書は、ニートの言い分とか、「社会が悪い」といういわゆる尾崎豊的メッセージは皆無であり、むしろ徹底的に現状を受け入れ、見極めてなおしたたかにさまざまな制度やインフラを利用し「生き延びる」術が満載である。

 押しつけがましくなく、かといって情緒的でない論理的な主張は好感が持てる。

 ど~でもいいけど、この本はkindle本のものを買ってNexsus7で読んだ。
by hohoho-bw | 2013-08-11 15:07